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★★★第15回公演★★★

『飛べない生き物』


【公演日時】2017年12月15日(金)~17(日)
  15日(金) 16日(土) 17日(日)
14:00
19:30

【チケット】前売券 (一般):3500円/(高校生以下):2000円
[チケット予約受付中]

【会場】新生館スタジオ
【アクセス】東武東上線「中板橋」駅 徒歩4分

【お問い合わせ】jackpot2010@live.jp
コンテントヘッダー

リレー台本11人目、つまりはラスト byマチャキ

更新遅れました。
え~・・・とりあえず、書きます。
ついでに今までの分も、改行など手直しして見やすくしました。
かなりの長さなので、覚悟してお付き合い下さい。



ここはハイツ石神井物語(仮)

登場人物

春野:22才♂。ハイツ石神井201号室。田舎から就職の為に引っ越してきた。

夏木:49才♀。ハイツ石神井101号室。大家さん。旦那さんと一緒に暮らしている。

秋田:32才♂。ハイツ石神井203号室。

冬月:27才♀。ハイツ石神井103号室。

時子:23才♀。探偵。202号室に住む住人のことを調べているらしい。

-----------------------
ピンポーン♪

夏木「(はーい)」

ガチャ

夏木「はい。」
春野「あ、こんにちは大家さん。引っ越しの方終わりました。今日からよろしくお願いします。」
夏木「ああ、春野さんお疲れ様。今日からよろしくお願いしますね。」
春野「はい。ご迷惑を掛けないように気を付けますので、どうかよろしくお願いします。」
夏木「あら、いいのよ。賑やかくらいが良いんだから。お友達とか気にしないで呼んだりしてね?」
春野「ありがとうございます。あ、これつまらない物ですが。」
夏木「あらあら、気を使わなくても良いのに。ありがとう。何か分からない事や困った事があったら遠慮なく言ってね?」
春野「はい。あ、早速なんですが段ボールなんかの回収は何曜日ですか?」
夏木「段ボールは水曜日ね。新聞や雑誌、古着なんかも水曜日よ。」
春野「ありがとうございます。あの…他の部屋の方にもご挨拶をしたいんですが、この時間は皆さんいらっしゃいますか?」
夏木「どうかしら…お仕事されてる方もいらっしゃるから。103号室の冬月さんはいらっしゃるかもよ?」
春野「そうですか、じゅあこの後訪ねてみます。」
夏木「あ、春野さん、食器なんかもう揃えたのかしら?」
春野「いえ、これから買いに行こうかと思ってます。」
夏木「じゃあ家の使ってないお皿とかいらない?貰い物でいっぱい増えちゃってね、捨てるわけにもいかないし。良かったら貰ってくれるとありがたいんだけど。もちろん使ってない物だから安心して?」
春野「え?いいんですか?是非いただきたいです!」
夏木「あら良かった!じゃあ、適当に見繕って後で部屋に持っていってあげるわね。」
春野「いえ、後で僕が来ますよ。」
夏木「いいのよ、部屋の片付けもあるでしょ?後で持って行くから。」
春野「何から何まですいません。」
夏木「いいのいいの、、若いんだから遠慮しないの。じゃあまた後でね。」
春野「はい、ありがとうございます!」

ガチャ

春野「ああ…、良い大家さんでよがっだなぁ…。」
冬月「ほ~んと、よがっだべなぁ。」

真後ろからした声に驚き、振り返る春野

春野「うわああぁぁぁ。」
冬月「あはははは。ゴメンゴメン驚かせちゃったね。君が今日引っ越してきた子?学生さん?」
春野「あ、はい。そうです!今日からお世話になります。201号室の春野と申します!あ、でも今年の春からは社会人になります。・・・あの、お名前お伺いしてもよろしいですか?」
冬月「あたしは103号室の冬月。そっかぁ。新社会人ってことね。初々しいなぁ。なんかかわいい。」
春野「か、かわいい!?」
冬月「うん。一生懸命訛りも隠そうとしてるとことかね。」
春野「えっ!?僕、まだ訛ってますか?スピードラーニングめちゃくちゃ聞いて練習したのに。」
冬月「え!?スピードラーニングって英語が話せるようになるって言うやつだよね?」
春野「はい。最初は英語覚えるつもりで購入したんですけど、聞き流してたら、英語よりも日本語の方が自然と入ってきちゃって。」
冬月「あはっ。そりゃそうだよね!で、それをお手本にしてきたんだ。」
春野「はい。大橋さんと稲田さんには本当に感謝してます。」
冬月「大橋さん?稲田さん?」
春野「あ、スピードラーニングの声の人です。なんか、もう毎日聞いてたら中の人が気になっちゃって。」
冬月「そうなんだぁ。やっぱりなんかかわいいね。」
春野「いや、そんな。僕なんかより冬月さんの方が全然かわいいですよ!」
冬月「そんなの当たり前でしょ!ふふっ。でも、ありがとね。お世辞でも嬉しいよ。」
春野「いえ、お世辞なんかじゃないです!ほんとにそう思ったんです。あ、そうだ!これっ。つまらない物ですが・・・。」
冬月「え~。こんなのいいのに!それに、つまらなくなんかないよ。ハルくん。」
春野「ハルくん?」
冬月「うん。そう。あたしより年下だからね。何かあったらおね~さんに言ってね。」
春野「はいっ!是非!」
冬月「じゃあ、あたし部屋に戻るね。あ、あと203号室の秋田さんには気を付けた方がいいよ。なんかあの人いっつもスーツにサングラスしてて怪しい雰囲気醸し出してるから。」
春野「スーツにサングラス!!あはは、殺し屋でもやってるんですかね!っていうかむしろゴスペラーズか!みたいなね!ププ。ま、とにかく気を付けます。」
冬月「あ・・・。」

冬月の視線を辿ると、そこには秋田が。

春野「は、はじめまして・・・。い、イカしたウェーブの髪ですね。。。」

秋田、無言で立ち去る

春野「ぼ、僕殺されちゃいますかね・・・?」
冬月「う~ん。その時は目撃証言してあげるね。じゃっ。挨拶回り、頑張って!」
春野「あ、ちょっと冬月さん、待って!・・・あ~ぁ。ど~すっべかなぁ。」

すると102号室から何やらがりがりと引っ掻くような音が聞こえてくる

春野「あ、102号室の人いるのかな。」

ピンポーン♪
反応なし

ピンポーン♪
反応なし

春野「あれー、気のせいかな。」

ドアに耳を当ててみる

時子「空き巣?」
春野「わ!びっくりしたー!ち、違うだよ!あ、いや、違いますよ。」
時子「じゃなに?このアパートの人?」
春野「そうです。今日201号室に越してきたばかりですけど。」
時子「ふーん、そうなんだ。」
春野「あ、あなたこそどなたですか?」
時子「あたし?あたしは、まあいいじゃない。」
春野「え?」
時子「そうだ、あんたの部屋行こ!」
春野「ええ?!」
時子「いいから、いいから。」

時子、春野をひきずるようにして2階に上がり201号室の前に連れて行く
202号室にチラッと目をやるが

時子「さ、開けて。」
春野「いや、開けてって。」
時子「いいから早く開けてよ。寒いし。」
春野「いや、だからなんで…」
時子「もうグズだなあ。貸して。」

時子、春野の手の鍵を奪い取り、さっさとドアを開けて中に入ってしまう。

春野「あ、ちょ、ちょっとー!」

春野も仕方なく中へ

時子「ありゃー、ひどいもんね。ダンボールだらけで足の踏み場も無いじゃない。」
春野「余計なお世話ですよ。越してきたばかりなんですから当然でしょ!それよりあなた何なんですか?人の部屋に勝手に上がりこんで。」
時子「まあ硬いこと言わないで。」
春野「硬いことって、もう何なんだ。出てってくださいよ!」
時子「そう怒んないでよ。あたしは時子っていうの。時ちゃんでいいわ。よろしくね。」

言いながら202号室との境の壁に耳を当てている

春野「時ちゃんって。このアパートの人ですか?」
時子「うん?あー、まあそんなとこね。」
春野「そうなんですか?何号室ですか?」
時子「あんた、なんて言うの、名前。」
春野「春野ですけど。ってか、ちょっとどこの部屋の方ですか?…あ、もしかしてさっきの102号室ですか。だったらすみません。なんか中から音がしたんでどなたかいるのかと思ったもんで、ご挨拶しようかと…」
時子「違うよー。」
春野「違うんですか?じゃあ、誰なんですか、あなた!」
時子「だから、と・き・こ。」

言いながら携帯を出して電話をかける
壁越しにかすかに呼び出し音が聞こえるが電話に出る気配は無い

時子「ちっ!」
春野「壁、薄っ!」

ピンポーン♪
ガチャ

春野「早!」
夏木「春野さん、持ってきたわよ、食器。あら、ガールフレンド?」
春野「いえ、ち、ち、違いますよ!この人は!」
時子「そうなんですー。こんにちは。今お友達になりました。」
夏木「そう。若い人はいいわねえ。なんでもスピーディで。もうおうちに入れる仲になるなんてねえ。わたしが若い頃なんてとてもそんな…」
春野「いえ、だから違いますよ。それにピンポーン♪ガチャもスピーディすぎるでしょ。」
夏木「春野さん、どうかしらこんなのとりあえず持ってきてみたんだけど見てみて。要らないのがあったら返してくれていいのよ。まだ他にもあるの。押入れ開けたら、もう出てくるわ出てくるわ。あんまりたくさんあるからまずはこれだけって思ってね。何でも言ってね。あ、そうだ。新品の小さな湯沸しポットもあるのよ。あれなんか一人暮らしの男の子にはちょうど良いわね。」
春野「あ、あの、大家さん。ありがとうございます。とりあえずほんとにこれで充分です。ご覧の通り片付けはまだまだこれからなんで、置いとくとこもないですし。」
夏木「あっそうね。そうね。あらやだ、ごめんなさいね。わたしったらおせっかいだもんだから、ついついあれもこれもってね。」
春野「あー、おせっかいだなんてとんでもない!ものすごく助かります。ありがとうございます。ホントにお茶碗一つ無いですから、ありがたく使わせていただきます。」
夏木「そうお?ホントに要るかしら。」
春野「ホントにホントに要ります。ホントにありがとうございます。また整理ついたら足りないものも出てくるかもしれませんから、そしたらその時またお願いします。」
夏木「そうね。そうだわね。じゃ、とりあえずこれだけ置いていきますね。また遠慮なく言って頂戴。」
春野「はい、どうもありがとうございました。」
夏木「はいはい、それじゃお邪魔様でした。」

閉めかけたドアを再び開けて

夏木「ポットどうする?」
春野「あ、それはいただきます。」
夏木「そう?じゃ」
春野「後ほど取りにうかがいます。片付け一段楽したら。」
夏木「そうね、そうだわね。それじゃ。」
春野「はい、失礼します。」

バタン

ガチャ

夏木「何度もゴメンなさいねぇ~。後は、お若い二人でごゆっくり~」

閉めかけたドアを再び開ける春野

春野「ちょっと待ってください!!勘違いですよっ!!この人は今会ったばかりで、僕とは何のカンケイもないんですよっ!!!!!!!」
夏木「そ、そんな必死に否定しなくても~…」
春野「はぁはぁはぁ………スイマセン。つい………。」
夏木「………………。」
春野「………………。」
夏木「……あ、あ~でも、調度良いんじゃない?その子も以外とかわいい顔してるし、あなたも引っ越して来たばっかでさみしいでしょ?」
春野「違うっ!!!!」
夏木「えっ?」
春野「僕は…僕は…。一目みたときから………大家さん、あなたのことが………。あ、いや、スイマセン。気にしないでください。」
夏木「ハ…ハルちゃん…///」
春野「………あっ、そうだ!部屋が片付いたらまた遊びに来てください。大家さんに頂いた、このめおと湯呑みでお茶でも飲みませんか…////」
夏木「うん…わかったわ////……あ~そうだ、そうだっ!そろそろ旦那が帰ってくる時間だわっ!夕飯の準備しなくっちゃ!今夜は濃~厚クリームシチューよ~。それじゃ~ね~」

バタン…。

時子「へぇ~~~~。」
春野「なんだよっ!まだいたのかよっ!」
時子「ハルちゃんっ♪だって!」
春野「うるさいよっ!早く帰れよっ!」
時子「へぇ~~~~。あぁゆうのが趣味だったんだぁ~」
春野「おまえに関係ないだろっ!」
時子「熟女好きなんだぁ~」
春野「そうだよっ!!悪いかよ!!俺は無類の熟女好きなんだよ!!あぁゆうのたまんねぇんだよなぁ~………。って、言わせてんじゃねーよ!!」
時子「ふふふ。」
春野「で、あなたは一体誰なんですか?いきなり人の部屋入り込んで失礼にも程があるでしょ」
時子「あー、私?私はこの近くの探偵事務所の者よ。こうみえて探偵よ。」
春野「探偵…?あなたが?」
時子「そうよ。女探偵ってやつよ」
春野「…。」
時子「なによ?」
春野「あ、いや、やっぱあ~都会はすごかねぇ~。」
時子「あんたどこから来たのよ。まぁいいわ。今、このアパートの住民の調査中なの。怪しいと思うのよね~。あの人」
春野「あの人って…。」
時子「あっ、そろそろ時間だ!帰らなきゃ!じゃあまたね、ハ・ル・ちゃんっ♪」
春野「あっちょっと待って…!」

バタン

春野「なんなんだべ。でも、探偵が調査って・・・。よぐ考えるとなんか物騒だよな。」

と、隣の202号室から、また携帯の呼び出し音が聞こえる。

202号室の住人「もしもし。・・・3匹の小豚。」
春野「!!こんなに会話が丸聞こえなのけ・・・。てか今度は普通に電話にでてる・・・。」
202号室の住人「その件に関しても、明日報告書を提出する。明日は14時に花小金井駅だ。東小金井じゃないぞ、間違えることのないように。以上。」
春野「聞ぎたくねえのに全部聞こえるっぺ。自分も気をつけよう。」

と、202号室から、釘を打つような音が聞こえてくる。コンコンコン。

春野「なんだ、なんだ。家具でも取り付けてんのけ?」

しばらく、コンコンが続いたあと、今度はドリルを使っているような音がする。ドドドドドド。

春野「ぎゃっ!これはもう、うるさすぎる・・・。初日で隣人ともめたくねえけど・・・。挨拶に行くついでに、ちょっと静かにしてもらえねか、行ってくんべ。」

春野、部屋を出ると、そこに、秋田が立っている。秋田はどうやら202号室を訪れようとしていたらしい。

春野「あ、秋田さんですよね?さっきは、あの失礼いたしました。僕、201号室に今日引っ越してきました。春野と申します。これからよろしくお願いいたします。」
秋田「・・・・よろしく。」
春野「あ、202号室の方とお知り合いなんですか?」
秋田「い、いやあ、別に。」
春野「あ、もしかして秋田さんもうるさいから苦情言いに来たんですか?そうですよね?釘を打つ音がすると思ったら、今度はドリルの音で・・・。202号室の方も引っ越してきたばかりなんですかねえ。」
秋田「・・・。おい、お前。」
春野「はい?」
秋田「悪いことは言わねえから、202号室のことを詮索するのはやめときな。」

秋田203号室に戻っていく。

一旦部屋へと戻った春野
隣室の音は止んでいる

春野(あれ?静かになってんな。んだば、ちょっとお茶でも飲んでから隣に挨拶に行ぐかな。行ぐの怖いな。このアパート、女性陣はいいんだよな。大家さんは俺好みの熟れ熟れの素敵な女性だし、103号室の冬月さんも可愛くて合格!でも203号室の秋田さんはゴスペラーズの格好した殺し屋みたいだし、202号室は詮索するなとか意味深な事言うし。隣なんだから気になるでしょ!ていうか、あんなに壁薄くて電話の声丸聞こえで、気にすんなって方が無理だべ!)

そこへ、またしても隣室から騒音が鳴り響く
今度はチェーンソーで何かを切っている様な音

春野「これはもう我慢できね。」

部屋を飛び出し、202号室の前へ
激しく戸を叩く春野

春野「すいません。すいませーん。隣の部屋の者ですが」

ドンドンドン

春野「すいませーん。すいませーん。」

ドンドンドン

暫く続けると、音が止み、玄関が少し開いた
隙間から目だけが覗いている

202号室の住人「はい。」
春野「あの、今日隣りに引っ越してきた春野と申します。」
202号室の住人「はぁ」
春野「あのですね、お願いがありまして。このアパート、結構壁が薄いみたいですし、もうちょっと静かにしてもらえないでしょうか。」
202号室の住人「・・・・・・」
春野「あの・・・」
202号室の住人「・・・・・・・・・」
春野「あのぅ」
202号室の住人「・・・聞いたのか」
春野「え?」
202号室の住人「聞いたのか」
春野「え?」
202号室の住人「聞いたんだな」
春野「え?」
202号室の住人「わかった」

バタン
玄関が閉められる

春野「えーーーーーーーーーーーーーーーーー?」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

冬月「はい、どうぞ」
春野「ありがとうございます。いただきます」
冬月「砂糖とミルクは?」
春野「いえ、結構です。すみません」
冬月「それで、聞きたい事って?」
春野「ああ、えっと、202号室の事なんです。いや、そんなの大家さんに聞けばいいとは思うんですよ。思うんですけど、大家さんの前だと、胸がドキドキしちゃって上手く喋れなくなっちゃって」
冬月「ああ、そうね、なんとなくわかる~。大家だもんね。最初は緊張するよね」
春野「いや、そういうのじゃなくて(頬を赤らめる春野)」
冬月「・・・」
春野「で、秋田さんには202号室は詮索するなとか変な事言われてるから聞きに行きづらいし、102号室の人には未だに会えてないし」
冬月「それで私の所に来たんだ」
春野「はい。一人暮らしの女性の部屋に行くのはどうかとは思ったんですけど、どうしても気になってしまって」
冬月「ふーん」

(引っ越した日の事を話す春野)

春野「あれ以来大きな物音はしなくなったんです。だけど、今度は夜中にぼそぼそと何か言ってるんです。何を言っているのかまでは聞こえないんですけど、何時間も。それに、昨日気付いたんですが、隣の部屋との間の壁に小さな穴があいてたんです。よく見ないとわからない位ちっちゃい穴が。気のせいかもしれないんですが、そこから見られてるような」
冬月「わかった。君の状況はよくわかった。その上で言わせてもらうけど」
春野「はい」
冬月「202号室は誰も住んでないわよ」
春野「へ?だってさっき電話の話しも聞こえたし、実際に202号室の人と会いましたよ。黒のニットとサングラスで顔が全然分かりませんでしたけども。そして202号室の人を調べてる時子さんて探偵とも会いましたし。」
冬月「大問題じゃない!ちょっと大家さんに報告してくる!」
春野「あ!ちょっとまってくだ」

バタン。。。

春野「もう。せっかちだなぁ。」

ドンドンドン。

春野「あ!戻って来たのかな?冬月さん?どーぞ!」

春野「!!!!!」

202号室住人「こんにちは。」

202号室住人が帽子とサングラスを取ると。

春野「ん?秋田さん?んん?なんで?二つ部屋借りてんの?」
秋田「色々と事情がありまして。そしてあなたにも協力して頂こうと。」
春野「ん?ん?全然話しが見えません。あの小さい穴は?なになに?こわい!泣」
秋田「先ほど、女性と会っていましたね?」
春野「冬月さん?」
秋田「違います。」
春野「時子さん?探偵の?」
秋田「そうです。実は彼女は探偵なんかじゃありません。そして私は怪しくなんかありません。」
春野「怪しいです。」
秋田「私は警察です。」
春野「嘘です。」
秋田「嘘じゃありません。警察手帳もホラ。」
春野「偽物です。汚れてます。」
秋田「いい加減にしてください。逮捕しますよ。」
春野「すいません。」
秋田「いいですか?」
春野「・・・はい。」
秋田「彼女は・・・・・」
春野「…はい」
秋田「……某国のスパイだ」
春野「あっちょんぶりげっ!?」
秋田「あっちょ…??
なんだその意味不明な言葉は!素朴な田舎者みたいな風貌をしているが、なにかの暗号か、それは!まさか、きさま、工作員だなぁ!!」
春野「あっちょんぶりげっ!?は驚きの言葉。手塚治大先生へのオマージュです。ぼくはお察しのとおり素朴な田舎者ですよ」
秋田「手塚先生…。おしい人を亡くされた」
春野「それで、スパイってゆーのはどういうことですか?」
秋田「…そもそも、このアパートなのだ!なぜ、君はここに引っ越してきた!なぜ、あの大家は君を受け入れたのだ!君は君自信の命を守る権利がある。そして、私は君のような一般人を守る義務がある。」
春野「…あっちょんぶり」
秋田「あぁ、手塚先生。この素朴な田舎者を見守りください。…心して聞け。このアパートは反政府組織『アルカナイカ』の拠点なのだよ。」
春野「そんなバカな話ってないですよ!」
秋田「貴様ぁーそこはあっちょんぶりげっ!?と言うところだろう!」
春野「どうでもいいですよ、そんなことは!でもなんで、ぼくのような素朴な田舎者が入居できたんでしょうか?」
秋田「それを言うなら、なぜおれが入居できているんだ!…わからんのだ、やつらは何をたくらんでいるのだ。おれもいとも簡単に入居できたよ。そこがまた不気味だ。しかし、私は危険とはわかっていても潜入しなければならない。そして、住んで半年だ。やつらは大人しいもんさ、まったく普通に生活しているとしか思えん。」
春野「203も202も2つとも借りてて怪しまれないんですもんね」
秋田「私は203しか借りておらんよ」
春野「え?だって202から出てきたじゃないですか!?」
秋田「君はめぞん一刻という漫画を知ってるかね?」
春野「むかし読んだことはあります。」
秋田「四ッ谷さんという人が出てくるだろう。五代くんの部屋との壁をくり貫いてのぞきやらをする。私は四ッ谷さんが大好きでね。202号室はそのオマージュなのだよ。202を通り201の君をのぞく。」
春野「何を言い出すんだ、あんたは!犯罪だぞ、犯罪!」
秋田「バカ者!この警察手帳が目に入らぬというのか!君をのぞくなんて冗談に決まってるだろう。全てはアルカナイカの実態を調査するためだ。分かってくれ、伍代くん。」
春野「ぼくは伍代くんじゃないだべやー」
秋田「冗談だよ、冗談。君はからかいがいのある奴だな。」
春野「もう真面目に話てくれないと怒りますよ!って、この部屋、冬月さんの部屋ですよ。こんなべらべらと話てていいんですか?あれ?冬月さんは味方ですか?」
秋田「冬月は組織の人間だ。そして、あの女。時子だっけ?あいつは私たちの味方だ。」
春野「味方のくせに名前がうる覚え?」
秋田「あいつはコードネームをころころ替えるからな。わからんのだ。」
春野「そうなんですか」
秋田「そうなんです。そして、なぜ私がこんなにもここでべらべらと喋っているかというと。君のおかげだよ。ごだ…いや、君。」
春野「春野です。ぼくのおかげとはどういうことですか?」
秋田「かねてから私は組織の内部に迫ろうと試みてきたが、やつら、何気にガードが固い。そこへきて君が入居そうそう冬月の部屋に侵入した!それにあやからない手はないじゃないか!」
春野「ガードが固い?きさくな人たちだけどな。すんなり入れてくれたし」
秋田「私が入ろうとしたら、断りやがったよ、あの女!人を軽蔑した目で見やがって。」
春野「でも、秋田さんが来ていたら、冬月さんは不信がるんじゃないですかね?」
秋田「私は不審者じゃないぞ。これが目に入らねぇってのか。君に用があったということにすればよかろうよ。そもそも、あの女、私がここに訪ねてきてもドアさえ開けちゃくれない。」
春野「まさか、部屋を調べたりしないでしょうね?やめてくださいよ。冬月さんが帰ってきたら怒られるじゃないですか!」
秋田「やっと、部屋に入れたんだ。今を逃したら二度とチャンスが来ないかもしれないだろ!」
春野(…ひょっとしたらこの人、ただの変態かもしれない…)

秋田、冬月の部屋を探ろうとする。

春野「ちょ、ちょっと!ダメですってば!」
秋田「良ーって!大丈夫だって!」

ガチャ

冬月「ただいまー。って、え?何してるの?」
春野「あー!冬月さん!この人が勝手にー!」
秋田「現れやがったな…。今日こそお前の正体を暴いてやる!こいつの前でな!」
冬月「は?何言ってるのよ。」
春野「そうですよ。秋田さんやめましょうよ。」
秋田「いい加減にしろ!お前は反政府組織『アルカナイカ』ナンバー2だろ。」
冬月「……言い逃れはできないようね。」
春野「え?」
冬月「あんた、何者?」

冬月、突然拳銃を取り出す。

秋田「思った通りだ。」

秋田も拳銃を取り出す。

春野「っっっぇえええぇええ!?(そ、そんな、冬月さんが悪者?!どーゆーことだべ?!)」
秋田「手加減しねーぞ。」
冬月「こっちの台詞よ。」
春野「なんで?なんで!二人とも拳銃なんて!」
秋田「いっただろ?あいつは反政府組織の人間、俺は警察だ。拳銃くらい持ってて当然だ。」
春野「じゃ、じゃあ冬月さん…」
冬月「そうよ。私は『アルカナイカ』のメンバーよ。」
春野「うそだべ。うそだと言って!」
秋田「だから言ったろ。 お前は危ないから下がってろ!」
春野「待って待って!」
秋田「今日ここでお前を倒す!」
冬月「望むところよ!」

シュッ!シュッ!

春野(…あれ?拳銃ってこんな音じゃなかったような。俺、耳おがしくなっだのか。ん?ごれ水?)
秋田「ぶッ。あっはっはっはっは!」
冬月「あはははははは!」
春野「どうしたんですか?え?二人とも!」
秋田「せーの!」
秋田・冬月「どっきり大成功!」
春野「ど、どっきり?ちょっと、どうゆう…」
冬月「ハルくんが来るって言うから計画したドッキリよ。」
秋田「要は歓迎パーティーだな。」
春野「じゃ、じゃあ!」
冬月「悪の組織云々は全部嘘よ。秋田くんが考えたシナリオ。」
春野「そうなんですか!で、でも拳銃は?」
冬月「いやだ、水鉄砲よ。100均のね!」
春野「なーんだ!え、でも202号室は?」
秋田「大家さんもグルってことさ。」
春野「…だいぶ凄いドッキリですね。」
冬月「まあね。でも新しい人が来るならこれくらいやらないと!」
秋田「そうそう!」
春野「あ、ありがとうございます。」
冬月「じゃあ、大家さんも呼んで、歓迎パーティーしよ。」
秋田「今夜は飲むぞーー!」
冬月「この人、飲むと凄いからね。がんばろうね。」
春野「は、はあ。あ、あと一つ良いですか?」
冬月「ん?」
春野「あの、時子さんって?」
秋田「あ。そいつ俺も気になってたんだよな。春野がシナリオにない女の名前言うから冬月が勝手に増やしたのかと思ってた。冬月の友達?」
冬月「…時子なんて知らないわよ?」
3人「……………。」
春野(あーーよがっだべ。全部嘘か。秋田さんも変態じゃないっぽいし、よがっだなあ。ってこんなこと考えてる場合じゃないべ。時子って・……誰?!)

――その夜――

202号室にて…
春野の歓迎パーティーをしている。

「あははははははっ!」
「わはははははーー!」
「おほほほほほほほほーおーほほほほほほほほっ!」
「あはあはあはあはあははははー・・・」
「へへへへへへっへへへ」
「ひゃーはっはっはっはっはっはー」
「うひょひょひょひょひょー」

春野「ちょっとーみなさん笑いすぎですよ。俺、拳銃がでてきた時はもう本気で死ぬかと思ったんですからぁ!!」
秋田「ありゃー傑作だったよ!伍代くんのあの顔!いやぁー大家さんにも見せてあげたかったなぁー」
夏木「あらぁー見たかったわぁ~」
春野「大家さんまでぇ~・・・てゆーか伍代じゃないです!春野です!」
冬月「私、水鉄砲に怯えてるハルくん見たら笑いそうになっちゃったわよ。でも迫真の演技だったでしょー?」
春野「えぇ、まぁ。信じ切っていましたから僕。」
夏木「久しぶりに新しい人が入ってくるってみんな楽しみにしてて、ね?」
冬月「どうせなら派手にどっきりとかやっちゃう?みたいなノリになって」
秋田「で、俺がシナリオを書いたってわけ!どう?」
春野「ど、どうって・・・まぁ、一生忘れもしない思い出にはなりましたけど・・・。」
秋田「そうかそうか!まぁ、俺のシナリオが良かったってことだな!あっはっはっはっは!」
冬月「あら、私の演技も良かったでしょー?」
大家「とにかく、大成功で良かったじゃない。ね!」
春野「良かった・・・のか・・・?まぁ、歓迎してもらってっるってことで、ありがとうございます。東京は怖い人ばっかだと聞いてたんですけど、なんかこのアパートのみなさんは、家族みたいなあったかい方々で、すごく安心しました。」
夏木「そう言ってもらえると嬉しいわ。」

ピーンポーン♪

夏木「あら、誰かしら?」
冬月「他に誰か呼んだ?」
秋田「いや、俺は呼んでないぞ」
時子「ハルちゃんいるー?」
夏木・秋田・冬月「・・・?」
春野「と、時子さん!?」
夏木・秋田・冬月「時子??」

=================================
↓続きです。

春野「あ、昼間にも僕が言ってた・・・何でもこのアパートの202号室を調べてる、探偵さんだとか。」
秋田「202・・・この部屋をか?」
春野「はい、そうらしいです。」
夏木「(玄関の覗き穴を覗く)あ~。この前、ハルちゃんと一緒にいた子ねぇ。」
時子「(声)ハルちゃーん、そこにいるんでしょー?」
春野「は、はーい。あのぅ皆さん、時子さんも一緒にってダメですかね?」
夏木「ハルちゃん。この子、ハルちゃんのガールフレンド?」
春野「いえ!ちょっと話しただけっていうか。でも悪い人じゃなさそうなので、知り合い、後々友人になれればいいなぁ、なんて思ってます。」
夏木「そう。良かったわ。」
冬月「まぁ、探偵なら警察よりマシよね。」
春野「え?」
秋田「とりあえず春野君、こっちに来たまえ。」
春野「秋田さん、やっとちゃんと僕の名前を。」
秋田「いいから。」
春野「はぁ。・・・押入れの中、ですか?」
秋田「うん。」
春野「もしかしてこの中に隠れて、時子さんを驚かせようと?・・・あ、流石に、本当に隣の部屋と繋がったりはしていないんですね。」
秋田「はっはっは、当たり前じゃないか。その代わり、ちょっと面白い造りになってるよ。」

秋田が側の壁にあるレバーらしき物を引くと、春野が入っていた押入れの床が開く。

春野「うわぁっ!?」

春野はそのまま下の階に落ちる。

大家「・・・まさか、これで死んだりしてないよね?」
秋田「まさか。多分、大丈夫でしょう。」
冬月「こんな仕掛け、いつの間に?」
大家「秋田君と二人で最近ね。下の部屋のドアはアレだから、この上の部屋から移動出来る様に。」
秋田「春野君に勘付かれそうになった時は、どう誤魔化そうかと思いましたよ。」
大家「いやぁ、ちょっと大胆に進め過ぎたね。」
時子「(声)ハルちゃん?どうしたの?」
大家「さて、私と家内で春野と話してみるよ。外の女は、君達二人に任せる。」
秋田「了解です。」
冬月「ハルくん、応じてくれますかね?」
夏木「きっと大丈夫ですよ~。それに、初めは言う事聞かなかったとしても、言う事聞く様に“しつけ”るわ。」
秋田「怖い怖い。」
春野「(声)~~~~~~~!!」
大家「おっ、春野君は無事の様だね。」
秋田「ははは、元気いっぱいですね。」
夏木「良かったわぁ。」
大家「じゃあ、後は頼んだよ。」
夏木「行って来ま~す。」

大家と夏木は、床の開いた押入れを通じて下へ移動する。

時子「(声)ハルちゃんてば~。」
秋田「よし。では、招かれざるお客さんを招き入れるとするか。」
冬月「私にやらせて。サポートお願いね。」
秋田「りょ~かい。んじゃ、いくぞ。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

春野「・・・いたた。」

春野が202号室の押入れから落ちて目を覚ます。

春野「いったい何なんだべ。いきなり目の前が真っ暗に・・・?」

春野、辺りを見渡す。部屋の中は真っ暗で、殆ど何も見えない。

春野「皆さ~ん、何なんですか~?これも僕へのドッキリですか~?」

その時、足に何かが当たる。

春野「うわっ、びっくりしたべ。何か転がって・・・。」

しゃがんで調べる春野。

??「・・・うぅ・・・。」
春野「!?」

床に転がっていたモノ、それは・・・人間だった。

春野「うひゃあっ!?」
??「う・・・。」
春野「ああっ!すみません!勝手に部屋の中に入ってしまって!不可抗力っていうか!お休み中お邪魔してすみません!って言うか、こんな所で寝てると風邪ひきますよ・・・。」

勝手に謝り倒す春野。しかし、相手からの反応は無い。

春野「・・・あの~?」

春野はその人物におそるおそる近寄ってみる。薄暗い中、よく見るとその人物は女性の様で、口は何かで塞がれ手足は縛られていた。

春野「!?・・・ず、随分変わったご趣味ですね。い、いや、そういうのは人それぞれの自由って言うか。ぼ、僕は何も見てません!失礼しました!」

春野が急いでその場から離れようとした時、大家と夏木が上の階から降りて来る。

大家「まぁまぁ春野君、そう慌てずゆっくりしなさい。」
春野「お、大家さん!と、旦那さん!」
夏木「ハルちゃん、大丈夫?怪我してない?」
春野「え?はい、ちょっと頭を打ちましたけど大丈夫です。それより、これはどういう・・・?」
夏木「とりあえず、このままじゃ暗いから明かりを点けますね。」

夏木、部屋の照明を点ける。
少し薄暗いが、ようやく部屋の全容が見えてくる。

春野「うん?・・・う、うわぁっ!?」
大家「う~ん、やっぱりこの部屋の中は落ち着くね。」
夏木「そうですわね。」
春野「え・・・あ・・・。」
夏木「どうしたの?ハルちゃん。鳩が鉄砲くらった様な顔をして。」
大家「おいおい、それを言うなら豆鉄砲だろう?鉄砲くらったら死んじゃうよ。」

部屋の中は殆ど物が無く殺風景だった。
しかし、部屋のあちこちに赤い・・・まるで血痕の様な染みが付いており、本来他の部屋にはある筈の窓はコンクリートで埋められていた。
床に転がっていたのは、やはり女性だった。
下着姿で、口はガムテープで塞がれ、手足はロープで縛られていた。
体中、明らかに暴行を受けて出来た様な、生々しい痣でいっぱいだった。

春野「な、何ですか、これ。この部屋。その女の人、怪我してるんじゃ?て、手の込んだ悪戯は止めて下さいよ。もう引っかからないですって。」
夏木「ハルちゃん、落ち着いて。怖がらなく良いんですよ?」
春野「こ、怖がってませんって。だってこれも、僕を驚かせようとみんなで仕組んでいるドッキリですよね?」

言葉とは裏腹に、春野の体の震えは止まらない。

大家「よし、ちゃんと説明してあげよう。春野君、この部屋はこのアパートのどの部屋か分かるかい?」
春野「え?あ・・・上の、202号室の押入れから、下に落ちたから・・・もしかして、102号室ですか?」
大家「正解!」
春野「でもなんで、わざわざ上の202号室から直接移動出来る様に?」
大家「いやぁ。この部屋、見ても分かる様に出入り出来る所は全部コンクリで埋めちゃったからね。隣の部屋と繋げるのは普通すぎるから、上の202号室と繋げてみたんだよ。なかなか考えつかないだろう?アパートの、上と下の部屋が繋がってるなんて。」
春野「は、はぁ。」
大家「因みに、玄関もコンクリでガッチガチだ。外からも内からも開きはしないよ。」
春野「いや、そうじゃなくて・・・。」
夏木「この子は、私達のペットみたいなものよ。」
春野「・・・は?」
夏木「この部屋で、みんなで可愛がってあげてるの。」
大家「楽しいぞ~。こうやって愛情を注いであげたりするんだ。」

大家はそう言うと、床で倒れている女性を蹴り上げる。

女「むぐぅっ!」
春野「なっ!なんて事するんですか!?」
夏木「そうよ、あなた。その子はもうだいぶ弱っているんですから、ハルちゃんにやらせてあげないと。」
大家「そうだったそうだった。今日は春野君の歓迎会だしな。」
夏木「ほらハルちゃん。ハルちゃんもやってみて?」
春野「な、何を言っているんですか大家さん。もう充分ドッキリしましたから。もうこんな悪い冗談、止めましょう?ね?」
夏木「あらぁ、これは冗談なんかじゃないわよぉ?むしろ、これがハルちゃんの歓迎会のメインディッシュなんだから。」
大家「そうだぞ春野君。君の為にわざわざ、この子を可愛がるのをみんな加減していたんだ。君にも楽しみを取っておいてあげる為にね。」
春野(何なんだべ、これは。悪い夢け?二人の言ってる事の意味が分からないべ。)
夏木「ハルちゃんの名前を聞いた時は、それは驚いたわぁ。」
大家「私もだよ。これは凄い偶然だとね。」
春野「何が、ですか?」
夏木「だって『春野』でしょう?私達『夏木』、『秋田』、『冬月』。これでこのハイツ石神井に“春夏秋冬”がそろうのよ。これはもう、運命だわ。」
大家「だから君も私達の仲間に、いや、家族に加えようってね。秋田君も冬月さんも大歓迎だと言ってくれていたよ。」
春野(秋田さんと冬月さんも?あぁ、やっぱりこれは、みんなで俺をからかってるんだべ。・・・でも、それにしても・・・。)
夏木「この部屋、素敵でしょう?外からは何も手出し出来ない、まるで3匹の子豚のレンガの家。これなら、悪いオオカミも入って来られないわ。」
大家「そうとも。ここなら、家族水入らずで過ごせるってもんだ。」
夏木「だから何も心配しなくて良いのよ?この子がダメになったら、また新しい子を仕入れて来るし。」
春野(何で、何でこの二人はこんな恐ろしい事を、あんなに笑って言えるのけ?でも・・・顔は笑ってるのに、目が笑ってないべ。)
夏木「あ、もしかしてハルちゃんは素手じゃ嫌な派?仕方ないわねぇ。じゃあ、これを貸してあげましょう。」

夏木はそう言うと、ポケットからごついナイフを取り出す。それは、普通の主婦が普通に持っている様な代物では無かった。

春野「うわぁっ!?」

そのナイフを見て、抑えていた恐怖が臨界に達した春野は部屋の玄関へと駆け出す。

春野「助けて!誰か、助けてくんろーっ!!」
大家「はっはっは。春野君、言っただろう?この部屋から出るには、ここから202号室に上がるしかないんだよ。」
夏木「やっぱり、ハルちゃんは少し“しつけ”ないとダメみたいですねぇ。」
大家「残念だけど、そのようだね。」
夏木「ハルちゃん、言う事を聞く良い子になればあまり痛い思いしなくて済みますよ~?」
春野「ひいっ!」
大家「程々にな。私はちょっと上の様子を見て来るよ。」

夏木がジリジリと春野を追い詰める中、大家が上の202号室へ上ろうとする。
その時、上の階から何かを持った腕がスッと伸びて来る。

大家「うおおぉっ!?」

バババッという音と共に大家は叫び声を上げ、その場に昏倒する。

春野「・・・え?」
夏木「あなた!?」

直後、上の階から人影が飛び降りて来る。時子だった。

春野「と、時子さーんっ!」
夏木「貴女、どうやって?秋田さんと冬月ちゃんは?」
時子「あぁ、あの二人ならお生憎。この男と一緒で、お寝んねタイムよ。」
春野「とぎござ~ん!」
時子「はいはい時ちゃんよ~。ハルちゃん、生きてる~?」
春野「ふぁい、なんどが。」
時子「さて、残りはあんた一人よ。大人しく観念する・・・」
夏木「動かないで!」
時子「!」
春野「うわっ!」

夏木、春野にナイフを突き付ける。

時子「何?この後に及んで人質?」
夏木「出来ればハルちゃんは殺したくはないけれど、この場合は仕方ないわ。」
春野「えぇっ!こ、ころっ!?」
夏木「手に持っているスタンガンを捨てなさい。」
春野「あ、あれがスタンガン!本物初めて見た・・・。」
夏木「ハルちゃん、黙っていなさい。」
春野「ふぁい。」

時子、スタンガンを床に置き、部屋の隅に蹴る。

時子「これで良い?」
夏木「良い子ね。でも、少しおいたが過ぎたわ。お仕置きしてあげなくちゃ!」

夏木が時子にナイフで襲い掛かる。

春野「と、時ちゃーん!!」

時子は夏木のナイフを片手でいなし、もう一方の手で腰からスタンガンを取り出す。

夏木「なっ!?」
時子「甘いわね。」
夏木「ぎゃあっ!」

またしてもバババッという音と共に、夏木は昏倒する。

時子「ちゃんと確認しなきゃ。一個しか持ってないなんて言ってないわよ?」
春野「す、すご・・・。」

呆気に取られている春野をよそに、時子は縛られていた女性を介抱する。

時子「良かった。生きていたのね。」
女「う・・・。」
時子「辛かったでしょう?もう大丈夫よ、安心して。」
女「う・・・うぅ・・・。」

弱々しく泣く女性を時子は優しく抱きしめる。
春野は女性の両手の爪がボロボロに剥がれているのに気付く。
そして、この部屋の玄関に目をやる。

春野(あ、もしかして・・・。)
時子「ハルちゃん、こいつ等縛るから手伝って。後は警察に任せましょう。」
春野「え?」
時子「色々知りたい事あるでしょうけど、全部終わったら話してあげるから。お願い。」
春野「・・・はい。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ハイツ石神井での出来事が終わり、春野は時子の探偵事務所に連れて来られていた。

時子「はい。まずは、無事に生還出来た事を祝してかんぱ~い!」
春野「かんぱ~い!・・・って、やってる場合じゃないですよ!」
時子「なんでぇ?おめでたい事じゃない。生きてるって素晴らしい!」
春野「いや、まぁ、そうなんですけど。」
時子「・・・あの女性はね、ちょっと前にこの辺りで行方不明になってた人よ。」
春野「え?」
時子「警察も捜索していたんだけど、一向に行方知れずでね。ご両親が私に依頼して来たの。」
春野「・・・そうだったんですか。でも何で、時子さんはあのアパートが怪しいと?」
時子「あの女性が最後に目撃された付近一帯を調べてみたの。すると、ここ数年で似た様な失踪が3件もあったわ。更に調べてみると、怪しげな人物があのアパートに出入りしている事が分かった。」
春野「でも、そんなんじゃ今回の事と関係あるかどうかは分からないじゃないですか?」
時子「ん~。それは、勘。」
春野「勘って。」
時子「あら、こういう時はピンっときた勘はバカにならないものよ?」
春野「はぁ。そういうものですか。」
時子「まぁ私も、確信があった訳じゃないけどね。怪しいと思ったから調べてみただけ。そして、あの202号室が怪しいと踏んだの。あの部屋、たまに変な格好の人物が出入りしていたからね。しかも、同じ様な格好をしている割には微妙に体格が違う人物が数名。こりゃ、怪しいでしょ。」
春野「凄いですね。僕だったら、同じ格好をしていたら違う人間だなんて気が付きませんよ。」
時子「ふっふっふ、舐めてもらっちゃあ困るよキミ。」
春野「いやぁ、最初に会った時なんて、ぶっちゃけそんなデキる人に見えなかったから。」
時子「どんな風に見えてたんだか。ま、人は見掛けによらないって事よ。で、202号室に出入りしているのは誰なのか、それを確かめる為に隣のハルちゃんの部屋から電話を掛けたの。」
春野「ああ、それで。あの時掛けた相手って、誰だったんですか?」
時子「大家、夏木の旦那の方よ。」
春野「なるほど。でも、一体どうやって電話番号を?」
時子「そ・れ・は、企業秘密♪」
春野「怖っ!そう言えば、時子さんがいなくなったあの後、旦那さん誰かと電話していたんですけど。」
時子「単純に仕事の電話とかじゃないの?」
春野「いやぁ、それにしても意味深だった気が。」
時子「まぁ良いじゃない、後は警察に任せるわ。あまり深入りしても身を滅ぼすだけよ。」
春野「た、確かに。」
時子「でも流石の私も、本当に怪しいのは202号室じゃなくて102号室だったなんて思わなかったわ。思い返してみれば、確かに102号室の玄関が開くところ見た事無かったわね。」
春野「・・・僕実は、あのアパートに引っ越した日、102号室から音を聞いていたんですよね。」
時子「そうなの?」
春野「はい。何か、引っ掻いている様な・・・。彼女の爪、両手共ボロボロでしたよね?」
時子「うん。」
春野「口も塞がれ、手足も縛られ。そんな中で必死に、外にいる僕に助けを求めていたんじゃないでしょうか。あの時気付いてあげていれば、もっと早くに・・・。」
時子「それは気負い過ぎよ。あの部屋の中があんな事になっているだなんて、普通は誰も想像だにしないわよ。」
春野「そうかもしれませんけど。」
時子「私はあなたに謝らなければいけないわ。結果として、あなたを利用した様なものだし。」
春野「それは・・・確かに、怖かったし、途中本当に死ぬかと思ったし、正直チビりそうでしたけど。」
時子「チビったの?」
春野「チビってません!」
時子「ホントに~?」
春野「本当です!まぁでも、一人の女性の命が救えたのだから、良かったです。」
時子「ハルちゃん、ありがとね。あの女性も、きっと感謝していると思うわ。」
春野「いえ、僕なんて。あの場で何にも出来ませんでしたから。」
時子「自分が助かる為に、彼女を傷付けたりはしなかったじゃない?」
春野「それは、人として当然って言うか。」
時子「それを貫けただけ、立派よ。」
春野「・・・大家さんも、秋田さんも冬月さんも、全然悪い人には思えなかったのにな。」
時子「・・・人は見掛けによらないって事よ。」
春野「そう、ですね。」

少しの間、沈黙する二人。

時子「ハルちゃん、これからどうする?」
春野「そうですね。住む所も無くなっちゃったですし。」
時子「そうね。」
春野「やっぱり、東京は怖いです。」
時子「田舎、帰る?」
春野「・・・。」
時子「・・・あのさぁ、もし良かったら私の助手になんない?」
春野「え?」
時子「丁度、男手が欲しかったんだよね~。住む場所も、この事務所を管理がてら使って良いしさ。」
春野「・・・。」
時子「まぁ、嫌じゃなかったらだけど。」
春野「・・・危険な事、無いですか?」
時子「今回みたいなのはそうそう無いわよ。それに、いざとなったら守ってあげるから。」
春野「それは、男としてどうかと。」
時子「じゃあ、強くなりなさい。私だって女なんだから、本当は守ってもらえるなら嬉しいわよ?」
春野「時子さん以上に強くなるのは、ちょっと無理が・・・」
時子「時ちゃん!」
春野「え?」
時子「私の事は『時ちゃん』で良いって。話し方も、タメ語や方言使って良いから。」
春野「は・・・じゃなかった、分がった。」
時子「交渉成立かしら?」
春野「が、頑張ります。よろしくです。」
時子「よし、よろしく!」
春野「はは。波乱な生活になりそうだべ。」
時子「ところでさぁ、『ハルちゃん』じゃヤじゃない?」
春野「そんな事ねぇけど。」
時子「だって、あのオバサンが言ってた呼び名だよ?」
春野「お、オバサンって!あの人は綺麗な人だったべ!」
時子「はいはい、熟女好きね。ねぇ、下の名前は何て言うの?」
春野「名前は、春野ーーーーーー」


終わり
=================================


今までのを読み返しながら、構想を練る事2日。
それから、悩みながら書く事3日。
更新が遅れました事は、本当にお詫び致します。

自分でも、こんな展開にする気は更々無かったんですけどね~。
今書いてる最中の戯曲に、引っ張られたのかもしれません。
これのお陰で、戯曲の執筆が完全に止まってましたが。
多少強引ではありますが、拾うべきものは全部回収したつもりです。

と言うか、メンバー達よ。
好き勝手色んなもの置いていって、最後まで放りっぱなしは止めてくれ。
結局、全編の3分の1以上書くハメになったじゃなイカ。

疲れました。暫くリレー台本は勘弁です。
とりあえず座長にお返しします。
マチャキですた。
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